所詮、人間は愚かで憐れな存在でしかないんだ。

夏休み特別日記更新中!  このブログは社会的立場の低いオタク、ひきこもり、ニートの方々を全力で応援しています。

『DESIRE(前編)』

今日の俺は何かおかしい。今日の俺はいつもと違う。


今日の俺は、底無しの馬鹿だ。



『DESIRE(前編)』



事の発端は、今から約三時間前に遡る。


今日は久しぶりに部活がオフで、いつもより早く帰ることが出来た。ちょうど春香の所属するハンドメイド部も休みだったので、俺は春香と一緒に帰ることにした。


学校を出て四〜五分経った頃だろうか、他愛もない話をしながら歩いていた俺たちの頭上から、いきなり大粒の水滴が幾度となく降り注いだ。俗に言うにわか雨である。

「本日の天気は快晴!」と、どこぞのチャンネルの天気予報士が高らかに宣言していたこともあり、俺たちは傘という雨露を防ぐ文明の利器を携帯していなかった。

確かに、選択肢に雨宿りの項目はあった。あったのだが、突如滝の如く降り出した雨を器用に回避することが出来ない常人の俺たちは、既に頭からつま先までしっかりと水で被われていた。

仕方がないので、俺はその場から最も近い──正確な距離は分からないが、大体500メートルくらいだろう──俺が最もよく知る家、つまり、俺の家でひとまず服を乾かすことを提案した。

今思えば、服を乾かす、この言葉を口に出した時点で気付くべきだったのだ。この行為を実行するためには、一体どんなプロセスを踏むことになるのか。それは、いつぞや見た映画にも、どこかで読んだ小説にも記されていたはずなのに。




「お邪魔します」

「今日は家に誰もいないから、そんなに改まらなくてもいいよ」

何故、神は事情をやたら複雑にしたがるのだろうか。




家に着いた俺は、まず濡れた服を乾かすので、春香に服を脱ぐよう促した。そして、風邪を引かない為にシャワーを浴びるよう促した。語弊があるといけないから言っておくが、あくまでも俺は“促した”だけだ。強要はしていない。最も、純粋無垢な彼女は、疑うことを知らないのだが。


「風邪引くといけないから、体をお湯で流した方がいい。その間に俺は服を乾かしておくから」

あくまでも遠回しに、冷静に言ったつもりだった。

「え、えっと……うん」

少し顔を紅くしながらも、春香は了解してくれたようだ。当たり前と言えば当たり前なんだ。別に俺は間違ったことは言ってない……よな。

「あ、そうだ、あと」

今になって思えば、何故そんな常識的なことが口から出てきたのか分からない。柄にもなく動揺していたのだろうか。


「下着は別のところに置いといてくれ。その、まあ、見ちゃ悪いだろ」


俺は変態か。


「は、はい……」


俺のなけなしの善意を少なからず理解してくれたのか、春香は俺に罵倒雑言を浴びせるでもなく、シャワーを浴びるため風呂場へと向かった。顔がさらに赤くなっていたのは言うまでもないが。


相手が春香じゃなきゃ確実にぶっ飛ばされてたな。例えば夏実とか。少し冬彦の気持ちが分かった気がした。あんな変態の気持ちなど、分かりたくもなかったが。


春香が風呂に入った頃合いを見計らって、俺は脱衣所に服を取りに行く。下着に焦点を合わすことはしない。俺はそこまで変態じゃないんだ。そう自分に言い聞かす。
置いてあった服と入れ替えで、春香が一時的に着用するための俺が普段着ている服を置いてきたのだが。



そうだ、今日の俺は可笑しいんだった。



幸い夏服だったため、Yシャツを洗濯機に放り込み、スカートをハンガーに吊すだけで済んだ。一連の作業を終え、俺はリビングのソファに腰を下ろす。
窓の外では雨はまだ激しく地面に叩きつけられていて、時折雷のような光がちらついた気がした。



そして冒頭に至る。今になって思うと、俺は己が一時的欲求に任せて、とんでもないことをしてしまったのではないか──実際にはこれより大変なことが後に起こるのだが、現段階では伏せておく──と少しだけ反省した。しかし一方で、俺は仮にも春香の彼氏という特権を徒(いたずら)に利用したい気持ちを抑えられなかった。


“雨”という何処か神秘的な事柄を想像させるシチュエーション、それと相俟ってか、今日の彼女には普段より一層、俺を惹き付ける魅力があった。



to be continue…….





なかがき
昨日の夜眠れなくて色々考えてたらふと思いつき、勢いに任せて朝書いてしまいました。
分けるつもりはなかったのですが、予想に反して長くなったので前後編に分けました。その内纏めるつもりです。
完全オリジナルなので少し戸惑いになられたかもしれませんが、詳しい話はあとがきでします。登場人物の名前でブログ内検索していただければ、前に書いた設定とかが出てくるはずです。
一つ気になったのですが、制服のスカートって洗濯機で洗うんですかね?その辺のリアルな事情は疎いものでよく分かりませんでした。男子のズボンは家では洗わないので(少なくともうちはクリーニングに出します)、それと同じ扱いにしてしまいましたが、生地が薄いから洗うのかな……?創作をするには人生経験が豊富な方がいいということを改めて思い知らされました。

銀河にねがいを〜May wish of yours come true!

ハーイ! 星奏学院二年一組、報道部の天羽です!
今日は七夕ということで、コンクールの参加者たちに『あなたの願い事』について質問してみたいと思います!



『銀河にねがいを〜May wish of yours come true!』



────
「俺の願い事?」

はい、何でもいいですよ。火原先輩の願い事は?

「俺の願い事は、か、か、か……」

か?

「か、香穂ちゃんと、その……わあああ! 天羽さん、やっぱり今のなし! じゃあね!」

あっ……行ってしまった。まあ大体分かるんだけどね。



────
「私の願い事ですか? そうですね……やっぱり内気な性格を直したいです。香穂先輩みたいに明るくなれたらいいなと思います」

でも冬海さん、前に比べたら随分ちゃんと話せるようになったわよね。第一セレクションの時なんて、緊張しすぎて倒れちゃうんじゃないかと思ったわよ。

「は、恥ずかしいから言わないでください……」

あらら、逆戻りね……。



────
「僕の願い事かい? 僕はみんなが幸せでいてくれれば何も言うことはないよ」

さすが柚木様、優等生な回答ですね。でも個人的な願いはないんですか?

「そうだね……強いて言えば、長男に産まれたかったかな。いつも兄様に勝たないように努力してきたつもりだけど、たまには一番になってみたいかな。俺なら楽に出来ると思うけど」

えー、最後の方のは私の聞き間違いよね。もっとしっかりしなくちゃ。



────
「僕の……願い事……」

そう。志水君はどんな願い事をしたい?

「僕の……願い事……もっとたくさんの音楽を聴いて……たくさんの人の音を知りたいです……」

志水君らしいわね。って、寝ちゃったわ……。



────
「俺は参加者じゃねえぞ?」

いいじゃないですか。主催者として何か一言。

「主催者じゃないんだが……そうだな、やっぱり……声、か」

私も金澤先生の美声を御拝聴したいです。

「だ、誰にも言うなよ?」



────
「僕も答えていいのかい?」

はい! 是非お願いします。

「そうだね。やっぱりもっと多くの子どもたちに音楽の楽しさを知ってほしいかな」

王崎さんならきっと叶えられますよ。頑張ってください!



────
「願い事? 何でそんなこと……」

今日が七夕だから。金澤先生や王崎さんも答えたのよ?

「金やんも暇だな……。願い事ねぇ……サッカーとピアノを両立したいか。中途半端は良くないが、どっちも大切な物だしな」

土浦君なら出来るわよ。頑張れ!



さて、あと二人だけど……一体どこに行ったのかしら?



────
「願い事だと?」

「うん。今日七夕でしょ? 月森君にもそういうのあるのかなって」

「俺にあると思うのか?」

「今までの月森君ならそうやって答えてただろうなぁ」

「……母上に負けないくらいの演奏をする。それだけだ。だがこれは自分の努力次第で、願い事ではないだろう」

「くすっ……いいんだよ、そういうので」

「……日野はどうなんだ?」

「え、私? 私はやっぱり、もっとバイオリンを上手く弾きたい。でもただ弾くんじゃなくて、みんなを楽しませて、自分も楽しめる演奏がしたい、かな」

「……香穂子らしいな」

「えっ?」

「いや、何でもない」



やっと見つけた! あれ、二人一緒? 若い男女が放課後屋上で一体何をしていたのか、これは取材のしがいがありそうね!

「……はぁ。小一時間は覚悟した方がいいのか?」

「そ、そうだね……」




聖なる七夕の日、貴方の学校にも、音楽の祝福を──.




fin.




あとがき
『金色のコルダ』より、Allキャラパロ(若干月日風味)。時間軸はアニメ終了後と考えていただきたい。
今日は七夕ということで勢いで書きました。タイトルはピンク色のにくい奴からインスパイア。サブタイは絶対文法間違ってますが、意味としては「あなたの願いが叶いますように」です。
台詞だけなので三十分足らずで完成。全く試験期間中に何をやっているんだか。
手抜きにも程がありますが、場所、時間が何にも書かれてない。一応場所は星奏学院内のどこか。最後の屋上の場面は夕方辺りだとお考え下さい。
さて、何故今更コルダなのか。元々コルダのSSは書きたいと思っていたのですが機会を逃し、昨日最萌に香穂ちゃんが出てたので創作意識が湧き書きました。
別に月森×日野が好きというわけではありませんが、一応キャスト順から見て公式っぽいので使いました。因みに付き合ってはいません。
本当はリリも登場させて、「我輩の願いは、世界中に音楽の祝福を与えることなのだ!」という台詞を言わせたかったんですが、入れるタイミングを見失ったので断念。
しかし三ヶ月しか経ってないのに話し方とか性格とか、意外に忘れるものですね。
天羽さんの話し方はこんな感じでしたっけ?
冬海ちゃんのことはどう呼んでましたっけ?
土浦は金澤先生のことを金やんと呼んでましたっけ?
疑問を探し始めるときりがないので、気になった点があればコメントよろしくお願いします。

ホシの声を聞かせて――貴方に捧ぐ愛の歌(後編)

キラとカガリの誕生日会と称した大宴会はかつてない盛り上がりを見せ、皆時間という概念を忘れるくらいに騒ぎ、飲み、そして次々にぶっ倒れていった。
時刻は午前一時。既に日付が切り替わり、食堂内は静まり返り、床にはクルーの静態がごろごろ転がっている。しかしそこに“主役たち”の姿はなかった。




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『ホシの声を聞かせて――貴方に捧ぐ愛の歌(後編)』




「うーん、あすらぁん……」

「ほら、カガリ、しっかりしろ」

主役その一、カガリ・ユラ・アスハは、アスラン・ザラと共に自室に向かってゆっくりと歩いていた。
いや、正確に言うならば歩いているのはアスラン一人だ。

「あすらん! おまえものめぇ〜!」

「ほら、危ないから動くなって……」

宴会と言えば酒というのは言うまでもなく、元々酒に強くない体質なのに体の中にアルコールを注入したカガリは、これまた言うまでもなく酔っぱらってしまった。
そしてまともに歩けなくなったカガリを、アスランが背負い歩いているのだった



「んぅ……すぅ……すぅ……」

アスランの背中の上で、カガリはいつの間にか寝てしまっていた。

「寝ちゃったか……」

アスランは深い溜息を吐く。そしてポケットから藍色の小箱を取り出した。

「本当は直接渡したかったんだがな。しょうがないか」

小箱を開けると、中には指輪が入っていた。しかし普通の指輪より少々小さく、飾り気もないシンプルなものであるようだ。
アスランは自分の首に回されているカガリの左手の小指にそれを差し込む。

ピンキーリング。小指に付けるために少し小さめに設計された指輪。
アスランはオーブ脱出の際に密かに購入していたのだが、いかんせん金も時間もなかったせいで、これくらいしか買うことが出来なかった。

「でも、いつかはきっと……」

アスランは指輪の隣の指を見つめ、微かに聞こえる程度の声で言った。
少女の寝顔が、ほんの少しだけ和らいだ気がした。



その頃、主役その二のキラ・ヤマトは、ラクス・クラインと共に休憩室にいた。
窓の外には漆黒の宇宙が広がり、その闇の中で微かに輝く星が何とも幻想的だ。

「キラ、申し訳ございません。何も用意出来なくて……」

「いいんだよ、ラクス。僕は何もいらない。君がいてくれればそれだけで満足さ」

歯が浮くような台詞だが、それがキラの本心だった。

「キラ……ではせめて、この歌を贈らせてください」

ラクスは椅子から立ち上がり、キラの前に立って、歌い始めた。


こんなに冷たい帳の深くで
貴方は一人で眠ってる


「この歌は……?」

それはキラが耳にしたことのない旋律と詩であった。しかし彼の体の中に流れ込んでくる声が、その声に含まれる彼女の優しさが、キラの心を安らぎで満たしていった。


貴方の夢を見てた
子供のように笑ってた
懐かしくまだ遠く
それは未来の約束
いつか緑の朝に
いつか辿り着けると
冬枯れたこの空を
信じているから

Fields of hope…….


「“貴方”の歌姫、ラクス・クラインの新曲ですわ」

歌い終わった後、彼女は優しく微笑みながら彼に言った。

「ありがとう、ラクス」
彼女の歌声に、笑顔に癒されたキラもまた笑顔になり、そしてゆっくりと椅子から腰を上げた。

「じゃあ僕からも、お返しに一曲」

「えっ?」

あまりにも突然すぎるキラの申し出に、ラクスから思わず疑問の声が漏れた。

「ヘリオポリスにいたときからずっと好きだった歌。ラクスのように上手くは歌えないけど……」
一呼吸置いてから彼は息を吸い込み、口を開いた。


静かに呼吸重ねあわせた
やさしい時の中で
月の光は二人を照らし
闇に白く咲いた

どんなふうに伝えて
どんなふうに感じて
不思議 自然 君といれば
いつもホントの心につながる

僕にとってできること
すべて捧げたい
君といる未来描いて
揺るぎないいとしさに愛を込め
あふれだす想いを
抱きしめて……!

Shining Tears──.




HAPPY BIRTHDAY Soichiro Hoshi!




あとがき
はいっ! ということで前後編でお送りした記念小説。かなりお粗末な結果となってしまいましたが……。
タイトルの「ホシ」というのは「星」と「保志」の掛詞なんですね。分かってると思うけど。
ピンキーリングを使った小説は昔とあるシンルナサイト様で拝見しました。そこでそういう物があるって知ったんですけど。
気が向いたら次は「ひだまりスケッチ」か「シャイニング・ウィンド」を書こうと思っています。今度こそはきちんと書こう! 絶対に!! 因みに僕の座右の銘は「有言不実行」です。

ホシの声を聞かせて――貴方に捧ぐ愛の歌(前編)

不沈艦アークエンジェル、通称“足付き”。地球軍の戦艦として幾たびもの戦火をくぐり抜けてきたこの船も、今や地球軍に敵対する立場となってしまった。
地球軍でもザフトでもない、それらの中間色となることに、結果として大多数のクルーが賛成したものの、そもそもの元凶となった男、キラ・ヤマトは、艦内に用意された自室で希少な暇に何をするわけでもなくベッドに寝そべっていた。

「何か今嫌なことを言われた気がするけど……気のせいかな?」

コーディネイターの直感で何かを感じ取ったキラだが、結局その正体を掴むこともなく思考を止めた。

「うーん、最近は戦闘続きで休む暇もなかったけど、いざ戦闘がなくなるとすることもないなぁ」

キラ自身、もちろん戦闘を望んでいるわけではない。早く戦争を終わらせたいからこそ、敢えて混じらない色という最も茨の道を選んだのだから。しかし、このように突然自由時間を与えられても困るというのも、彼の正直な感想だった。

「ハッキングするにもめぼしいサーバがないしなぁ。アスランみたいに電子工作が得意だったら“トリィ二号”とか作れるんだけど……」

コペルニクスの幼年学校時代から電子工作が苦手だったキラには到底無縁の話である。
大体凡人が暇な時にすることといえば読書かゲーム、あるいは音楽鑑賞などだが、このコーディネイターの頭にはそういう常識的な考えは微塵も浮かばないらしい。ただただ無駄にブドウ糖を消費するだけで、時間ばかりが過ぎていった。



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『ホシの声を聞かせて――貴方に捧ぐ愛の歌(前編)』



「ん……あれ? 僕もしかして……寝てた?」

いつの間にか閉じていた瞼を開き、差し込んできた30ワットの光に目を軽く攻撃されつつ、キラは仰向けの状態からゆっくりと上体を起こした。

「あー、もうこんな時間……」

キラがベッド脇に置かれた小棚の上の時計を見ると、短針が数字の“6”を指していた。不毛な考えを巡らせていた時からして、三時間ほどが経過しただろうか。

「仕方ない。食堂でも行くか」

そう言って、キラは重い腰を上げ自室を出た。



「今日はやけに人が少ないなぁ。何かあったのかな?」

この戦艦アークエンジェル、そして共同戦線を張っているクサナギ、エターナルのクルーは、互いの船をよく行き来している。そのため、ある部屋からある部屋へ移動するときに数十人とすれ違うことはよくあることなのだが、今日に限っては部屋を出て突き当たりの三つ叉路でマードックに会ったきり、他には誰一人として会わなかった。

「マードックさんの様子もおかしかったよなぁ。僕が食堂に行くって言ったら驚いた顔してたし」

少々の疑問を感じつつも、キラは食堂へと向かう。すると曲がり角から突然、金色の髪の毛が飛び出してきた。
キラは勢い余ってそれに衝突しそうになったが、無重力状態で体が浮いていたこともあり、とっさに右手で壁を押し、その反動を利用することですんでのところでそれを避けることが出来た。

「うわっ!? ……なんだカガリか」

角から飛び出してきたのはカガリ・ユラ・アスハ。今はなき“オーブの獅子”の娘としてこれからのオーブ主張連合国の代表を担っていくであろう女である。

「なんだとはなんだ! 急に飛び出してきて危ないじゃないか!」

獅子の子の名に違わず、少々気が強いのが彼女の短所であり、また何よりの長所であった。

「いや、それはお互い様……まあいいや。それよりカガリ、今からどこに行くつもり?」

「どこって、食堂だが……もしかしてキラも呼ばれたのか?」

「呼ばれた?」

キラは首を傾げた。

「私はアスランから『六時半になったら食堂に来てくれ』って言われたぞ」

「六時半……? あっ!?」

カガリとの会話の中で何か重大なことを思い出したらしいキラはいきなり大声をあげた。そのキラの突然の発声に驚いたカガリは反射的に身体を上下に揺らした。

「な、なんだ突然!?」

「そうだ、そういえば昨日の夜ラクスが『明日の夜六時半になったら食堂に来てくださいね』って言ってたな……」

「お前、ラクスとの約束忘れてたのか?」

「え、だって、まさかあの状況で言い出すとは思わなかったからさ、よっぽど重要なことだとは思ったけど、お互いいっぱいいっぱいだったし……」

「いっぱいいっぱいって?」

「あ、いや、カガリは知らなくていいことだよ、うん」

「なんだよー、教えろよー」

「(そんなこと教えたらアスランに殺されちゃうよ……)」

キラは鬼のような形相を自分に向けているアスランの姿を思い浮かべ額に汗をかきつつ、不満げな顔をしているカガリの腕を引き、再び食堂へと向かった。



キラがカガリと出会ってから数分後、二人は無事食堂に着いた。

「なんだか嫌に静かだね……」

やはりいつもとは違う空気を敏感に感じ取るキラ。

「そうか? 別にそこまで気にすることじゃないだろ」

対して、いつもと変わらぬカガリが普段と同じように食堂の扉を開いた。



パァーン! パァーン!

食堂の扉が開いたと同時に、銃声のような破裂音が何発も鳴り響いた。
しかしキラを襲ったのは銃弾ではなく、細長い紙テープの集合体だった。俗に言う“クラッカー”というものの中身である。

「キラ、カガリ、誕生日おめでとう!」

「おめでとう!」

紺色の髪を持つ少年、アスラン・ザラが祝福の言葉を発するのに続き、その場にいるクルー全員が口々に二人に言葉をかける。

紙テープに包まれたキラとカガリは暫し呆然としていたが、やがてキラが静かに口を開いた。

「えっと……これは一体?」

「なんだキラ、おまえ自分の誕生日忘れたのか?」

アスランが呆れた声で返す。

「今日は5月18日、キラとカガリさんのお誕生日ですわ」

ラクスが放った言葉により、二人は今日が何月何日かをようやく思い出した。そして、今日が記念すべき日、この世に二つとない特別な日であることを。



C.E.55 5/18 キラ・ヒビキ、カガリ・ヒビキ、「メンデル」にて誕生。
――コズミック・イラ年表より



「すっかり忘れてた……」

「まあこの状況だからな。忘れるのも仕方ないかもしれんが、自分が生まれた日くらいしっかり覚えとけよ? 両親が可哀想だ」

食堂入口よりのテーブルの前に立っていたムウが二人にそう言った。

「まあまあ、いいじゃない。とりあえず乾杯しましょう? せっかくの料理が冷めないうちにね」

この船の艦長、マリュー・ラミアスの一声で、食堂内は一瞬静まり返った。

「では、キラ君とカガリさんの誕生日を祝い、乾杯!」

『かんぱ〜い!』


無限に広がる宇宙の中の、ほんの小さな戦艦内。
そこで今、一時の休らぎを与えられた者たちによる、誕生会という名の大宴会が始まった。





後編へ続く。




あとがき
キラ&カガリお誕生日おめでとう〜〜〜!!
ということで10000hit記念、キラカガ誕生日も含めて小説を書かせていただきましたが……。
誠に申し訳御座いません! 多忙により中途半端な終わり方となってしまいました。
しかも相変わらずの文才のなさ。携帯でちょっとずつ書いていたこともあり繋がりもおかしい。
とりあえずこの続きは5月30日、もう一つの記念という形で掲載させていただきます。
5月30日は何の日か、このサイトに来ている方ならもちろんお分かりですよね?

Cherry blossoms.

桜の花もいつの間にか散り始めていた。俺の周りには、努力も空しく枝から落とされてしまった桜の花びらが、温かく柔らかい春風とともにはらはらと舞っている。
周りには誰もいない。ただこの桜の樹が両脇に整列しているだけだ。
しかし優雅にダンスを踊る桜の花びらの一枚一枚が、まるで人であるかのように錯覚させられる。


「俺はそんなに寂しがり屋だったかな」

今日は俺が通う高校の卒業式だった。卒業生のそれぞれがそれぞれの進路へ向かうため、もう二度と会えなくなる生徒だっている。もちろん、俺の友達だって。

会者定離。分かっていたはずだ。いつかは別れが来るってことは。
それなのに、いざと言う時にそれを受け入れられない。受け入れる勇気が湧かない。

胸の中はもやのようなものが広がり、それがより一層俺の気持ちを滅入らせた。



突然、突風が俺の体に強く吹き付けてきた。桜の花びらが飛ばされて、辺りは先ほどよりも凄然となった。

「七前! 一人で何やってんだよ!」

「七前君もこっちで一緒に写真撮ろうよー!」

静寂を打ち破ったのは、桜並木の向こう側から聞こえた声だった。
俺は声がした方向に向き直りよく目を凝らす。あれは……秋人と春香ちゃんか?

「早く来ねぇとお前だけ仲間はずれだぜー!」

「あたしは待ちくたびれてんだよ! 早く来な!」

二人だけじゃない。その後ろには冬彦と夏実もいた。四人とも俺を待ってくれているようだった。

少しきつめの言葉(春香ちゃんは別だが)が、今の俺にとっては妙に心地よかった。
霧が晴れた気がした。きっとさっきの突風で吹き飛ばされてしまったのだろう。



そうだ。悩んだって何も変わらない。その何かを変えるために、今出来ることをする。
無理に変えなくたっていい。とにかく今は、その微かな幸せを感じるだけだ。


俺は走り出した。足枷を付けたように重かった足が、今は嘘のように軽い。
南から吹く暖かな風が、心なしか俺の背中を押していた。




fin.




あとがき
実は4/1の日記は伏線だったんですよ。いや、そんな大層な物でもないですが。
ただせっかく書いた文章を無駄にしたくなかっただけです。
オリジナルキャラクターの説明はかなり前の日記で説明したと思います。
秋人、春香、冬彦、夏実、この四人を軸とした学園物を書きたいとか言ってました。
もしかしたらこのシーンはその小説の最後の一部なのでは……?
いや、書いてる自分でも知りません。てか面倒だからオリジナル長編はやるつもりありません。
さて、今回初登場の「七前」なる男。このキャラは朝起きて唐突に思いつきました。
フルネームは「須木七前」。読み方はスキ・ナナマエ。……ん? “好きな名前”?
そうです。こいつは夢小説のデフォルトネームとして使用するために生まれました。
この日記でもし夢小説を書く機会があれば、名前を変更する機能がないためこの名前を使うつもりでいます。だからこいつは男にも女にもなります。七前って名字みたいだから中性的でしょ?
こんな駄文に付き合っていただきありがとうございました。ではまた会う機会まで。
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