所詮、人間は愚かで憐れな存在でしかないんだ。

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ホシの声を聞かせて――貴方に捧ぐ愛の歌(前編)

不沈艦アークエンジェル、通称“足付き”。地球軍の戦艦として幾たびもの戦火をくぐり抜けてきたこの船も、今や地球軍に敵対する立場となってしまった。
地球軍でもザフトでもない、それらの中間色となることに、結果として大多数のクルーが賛成したものの、そもそもの元凶となった男、キラ・ヤマトは、艦内に用意された自室で希少な暇に何をするわけでもなくベッドに寝そべっていた。

「何か今嫌なことを言われた気がするけど……気のせいかな?」

コーディネイターの直感で何かを感じ取ったキラだが、結局その正体を掴むこともなく思考を止めた。

「うーん、最近は戦闘続きで休む暇もなかったけど、いざ戦闘がなくなるとすることもないなぁ」

キラ自身、もちろん戦闘を望んでいるわけではない。早く戦争を終わらせたいからこそ、敢えて混じらない色という最も茨の道を選んだのだから。しかし、このように突然自由時間を与えられても困るというのも、彼の正直な感想だった。

「ハッキングするにもめぼしいサーバがないしなぁ。アスランみたいに電子工作が得意だったら“トリィ二号”とか作れるんだけど……」

コペルニクスの幼年学校時代から電子工作が苦手だったキラには到底無縁の話である。
大体凡人が暇な時にすることといえば読書かゲーム、あるいは音楽鑑賞などだが、このコーディネイターの頭にはそういう常識的な考えは微塵も浮かばないらしい。ただただ無駄にブドウ糖を消費するだけで、時間ばかりが過ぎていった。



サイト10000hit&キラカガ誕生日&○○記念小説
『ホシの声を聞かせて――貴方に捧ぐ愛の歌(前編)』



「ん……あれ? 僕もしかして……寝てた?」

いつの間にか閉じていた瞼を開き、差し込んできた30ワットの光に目を軽く攻撃されつつ、キラは仰向けの状態からゆっくりと上体を起こした。

「あー、もうこんな時間……」

キラがベッド脇に置かれた小棚の上の時計を見ると、短針が数字の“6”を指していた。不毛な考えを巡らせていた時からして、三時間ほどが経過しただろうか。

「仕方ない。食堂でも行くか」

そう言って、キラは重い腰を上げ自室を出た。



「今日はやけに人が少ないなぁ。何かあったのかな?」

この戦艦アークエンジェル、そして共同戦線を張っているクサナギ、エターナルのクルーは、互いの船をよく行き来している。そのため、ある部屋からある部屋へ移動するときに数十人とすれ違うことはよくあることなのだが、今日に限っては部屋を出て突き当たりの三つ叉路でマードックに会ったきり、他には誰一人として会わなかった。

「マードックさんの様子もおかしかったよなぁ。僕が食堂に行くって言ったら驚いた顔してたし」

少々の疑問を感じつつも、キラは食堂へと向かう。すると曲がり角から突然、金色の髪の毛が飛び出してきた。
キラは勢い余ってそれに衝突しそうになったが、無重力状態で体が浮いていたこともあり、とっさに右手で壁を押し、その反動を利用することですんでのところでそれを避けることが出来た。

「うわっ!? ……なんだカガリか」

角から飛び出してきたのはカガリ・ユラ・アスハ。今はなき“オーブの獅子”の娘としてこれからのオーブ主張連合国の代表を担っていくであろう女である。

「なんだとはなんだ! 急に飛び出してきて危ないじゃないか!」

獅子の子の名に違わず、少々気が強いのが彼女の短所であり、また何よりの長所であった。

「いや、それはお互い様……まあいいや。それよりカガリ、今からどこに行くつもり?」

「どこって、食堂だが……もしかしてキラも呼ばれたのか?」

「呼ばれた?」

キラは首を傾げた。

「私はアスランから『六時半になったら食堂に来てくれ』って言われたぞ」

「六時半……? あっ!?」

カガリとの会話の中で何か重大なことを思い出したらしいキラはいきなり大声をあげた。そのキラの突然の発声に驚いたカガリは反射的に身体を上下に揺らした。

「な、なんだ突然!?」

「そうだ、そういえば昨日の夜ラクスが『明日の夜六時半になったら食堂に来てくださいね』って言ってたな……」

「お前、ラクスとの約束忘れてたのか?」

「え、だって、まさかあの状況で言い出すとは思わなかったからさ、よっぽど重要なことだとは思ったけど、お互いいっぱいいっぱいだったし……」

「いっぱいいっぱいって?」

「あ、いや、カガリは知らなくていいことだよ、うん」

「なんだよー、教えろよー」

「(そんなこと教えたらアスランに殺されちゃうよ……)」

キラは鬼のような形相を自分に向けているアスランの姿を思い浮かべ額に汗をかきつつ、不満げな顔をしているカガリの腕を引き、再び食堂へと向かった。



キラがカガリと出会ってから数分後、二人は無事食堂に着いた。

「なんだか嫌に静かだね……」

やはりいつもとは違う空気を敏感に感じ取るキラ。

「そうか? 別にそこまで気にすることじゃないだろ」

対して、いつもと変わらぬカガリが普段と同じように食堂の扉を開いた。



パァーン! パァーン!

食堂の扉が開いたと同時に、銃声のような破裂音が何発も鳴り響いた。
しかしキラを襲ったのは銃弾ではなく、細長い紙テープの集合体だった。俗に言う“クラッカー”というものの中身である。

「キラ、カガリ、誕生日おめでとう!」

「おめでとう!」

紺色の髪を持つ少年、アスラン・ザラが祝福の言葉を発するのに続き、その場にいるクルー全員が口々に二人に言葉をかける。

紙テープに包まれたキラとカガリは暫し呆然としていたが、やがてキラが静かに口を開いた。

「えっと……これは一体?」

「なんだキラ、おまえ自分の誕生日忘れたのか?」

アスランが呆れた声で返す。

「今日は5月18日、キラとカガリさんのお誕生日ですわ」

ラクスが放った言葉により、二人は今日が何月何日かをようやく思い出した。そして、今日が記念すべき日、この世に二つとない特別な日であることを。



C.E.55 5/18 キラ・ヒビキ、カガリ・ヒビキ、「メンデル」にて誕生。
――コズミック・イラ年表より



「すっかり忘れてた……」

「まあこの状況だからな。忘れるのも仕方ないかもしれんが、自分が生まれた日くらいしっかり覚えとけよ? 両親が可哀想だ」

食堂入口よりのテーブルの前に立っていたムウが二人にそう言った。

「まあまあ、いいじゃない。とりあえず乾杯しましょう? せっかくの料理が冷めないうちにね」

この船の艦長、マリュー・ラミアスの一声で、食堂内は一瞬静まり返った。

「では、キラ君とカガリさんの誕生日を祝い、乾杯!」

『かんぱ〜い!』


無限に広がる宇宙の中の、ほんの小さな戦艦内。
そこで今、一時の休らぎを与えられた者たちによる、誕生会という名の大宴会が始まった。





後編へ続く。




あとがき
キラ&カガリお誕生日おめでとう〜〜〜!!
ということで10000hit記念、キラカガ誕生日も含めて小説を書かせていただきましたが……。
誠に申し訳御座いません! 多忙により中途半端な終わり方となってしまいました。
しかも相変わらずの文才のなさ。携帯でちょっとずつ書いていたこともあり繋がりもおかしい。
とりあえずこの続きは5月30日、もう一つの記念という形で掲載させていただきます。
5月30日は何の日か、このサイトに来ている方ならもちろんお分かりですよね?

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