3rd story 「Separation ?別れの物語?」

「……以上により、平成24年度、第65回卒業式を終了致します。一同、礼」




そして私は、一人になった。





『Separation ?別れの物語?』





例年より冷え込んだ冬も終わりを告げ、草花が顔を出し始る春が訪れた。燦々と輝く太陽は、また一つ成長していく者に祝福の光を与える。



人生で二度目となる卒業式を終えた壮太と由希は二人、誰もいない屋上で手すりに体を預け、祭りのように賑わう校庭にぼんやりと視線を下ろしていた。



「さすがに二時間半座りっぱなしは疲れるよなあ」



卒業証書が収められた筒で肩を叩きながら、壮太が悪態を吐く。



「やっと解放されたー、って感じだよね」



気の抜けた声で言う由希。眠気からか、目を軽く擦る。



「今度は泣かないのか?」



笑いながら皮肉っぽく問いかける壮太。



「うん。だってもう子どもじゃないし」



「そっか。でも確かに由希は大人っぽくなったかもな」



「壮太こそ、落ち着きが出てきたよね。小学生の頃はネズミみたいに動き回ってたのに」



二人はそのままの体勢で笑い合う。顔を見合わせなくても互いの表情が想像できる。それは長年共に過ごしてきたという確かな証であった。





走って 走って 走って
会いにゆきたいよ 光の中でね
笑って 笑って 笑って
言えたらいいよね 「海まで行こうよ」
虹が消えたら 勇気を出して
青空のファンタジア

青空のファンタジア / 村田あゆみ





春の風は由希のまっすぐに伸びた黒髪を軽くなびかせ、仄かに甘い匂いを運ぶ。



由希は心を安らぎで満たすこの夢のような時間が、永遠に終わらないと錯覚しそうになった。



この世に永遠なんてものは存在しないのに。





─────





その日の夜、自室でテレビを見ていた私は家を訪ねてきた壮太から散歩に誘われた。



「なんで散歩?雨降ってるのに」



「今じゃなきゃ駄目なんだ。いいから一緒に来てくれ」



壮太の真剣な眼差しに、私はなんとなく胸に淡い期待を抱き、薄桃色をしたお気に入りの傘を持って外に出た。雨がぽつぽつと降り始めていた。





壮太に連れてこられたのは、家から5分ほど歩いた所にある小さな公園。私たちにとってはとても馴染みのある場所だった。



「昔はここでよく遊んだよねぇ」



家が近かったこともあり、幼い頃から私と壮太はよく一緒に遊んでいた。親同士の親交も深く、まさに家族ぐるみの付き合いという表現がぴったりの関係だった。



「懐かしいなぁ……」



目を瞑り、記憶に残っている映像を辿ってみる。滑り台、シーソー、タイヤ、ジャングルジム、砂場……。そのどれもがたくさんの思い出を持っていて、私の幼少時代を体現する大切な証だった。





思い出から離れゆっくりと目を開けると、壮太が私に視線に向けているのに気づいた。私はふと先ほどまで疑問に感じていたことを思い出し、口を開いた。



「そういえば、どうして急に呼び出したりなんかしたの?雨も降ってるし、用が済んだなら早く帰った方が」

「由希」



私の質問を遮って、壮太は私の名前を呼んだ。そして言った。





「俺、明日引っ越すから」





雨音が、消えた。





「え……?」



今、壮太はなんて言った?



「家系の事情ってやつでさ。詳しく話すと長くなるんだけど」



引っ、越す……?



「本当はもう一ヶ月くらい前から決まってたことなんだけど」



「ち、ちょっと待って!」



しばし呆然としていた私に少しだけ意識が蘇ってきた。私は乾いた喉からなんとか声を絞り出す。思考は依然として付いていかない。



「ウソ……だよね?引っ越しなんて、そんな急に……」



詰め寄って確認したかったが、足が棒のように硬直して動けない。



「嘘じゃない。一ヶ月前から決まってた」



淡々とした口調で壮太は言い放つ。その壮太の普段とは違う冷酷な態度に、私はさらに混乱する。



「ほら、でもさ、今の時代ケータイとかあるし!」



「…………」



壮太は答えない。



「いつでも連絡取れるじゃない!」



意識していなくても語気が荒くなる。しかし壮太は何も言わない。私の頭に血が上っていく。



「なんで何も言ってくれないの!?」



自分でも驚くほどの大声で叫ぶ。もう何も考えられなかった。考えている余裕はなかった。



「…………」



それでも言葉を発しようとしない壮太に私の怒りは萎縮し、やがて悲しみへと姿を変え始める。



「ねえ、答えてよ……」



声を必死で絞り出す。絶望の淵に立たされた私は、膝の震えに耐えきれずその場にへたり込む。



「…………」



私を見下ろす壮太の顔は靄がかかったようにぼやけている。頬を止めどなく流れる雫は雨に溶けていく。



壮太は私に背を向けて歩き出す。私は必死に手を伸ばして、その体にしがみつこうとする。



「待って!お願いだから……」



しかし、いくら手を伸ばしても届かない。行き場を失った二本の腕は虚しく空を切った。



「いやあああああああああああ!!!」



小さな体からあげられた悲痛な叫び声は、激しく降り注ぐ天の涙に掻き消された……。





離れることが運命なんて…
ずっとこのままと信じてた
あなたが…いない
ここには…いない
受け入れられずに探し続けた

あなたが…いない / 栗林みな実





──サヨナラ。





そして私は、一人になった。










使い古されたネタその1、引越し。引越し!引越し!さっさと引越し!しばくぞ!

相変わらず見直しをしない僕。二日で書いてるんだから仕方ない。

西暦じゃなくて元号で書くと不安になる。このまま何もなければ西暦2012年=平成24年でおk?
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

綺羅矢的

Author:綺羅矢的

好きなもの
【声優(個人)】
☆石原夏織さん
☆豊崎愛生さん
☆阿澄佳奈さん
☆花澤香菜さん
☆内田真礼さん
★保志総一朗さん
★藤原啓治さん
★中村悠一さん
★杉田智和さん
★細谷佳正さん
and more...

【声優(ユニット)】
☆スフィア
☆ゆいかおり
☆μ's(ラブライブ!)
and more...

【声優(楽曲)】
☆水樹奈々さん
☆茅原実里さん
★GRANRODEO
★鈴村健一さん
and more...
ツイッター
FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ
カテゴリー
FC2カウンター
新アクセス解析
リンク
○友人ブログ・サイト○
鮭缶メモリアル
Author:いくら+
木偶の坊になりたくはない!!
Author:仁丹

◆相互リンクブログ・サイト様◆
声優好きのつぶやき
Author:こじこじさん
ゆったり日記情報局(仮)
Author:setsuna1242さん
ひだまりびより!
Author:ふうりんさん
happy moment
Author:桜井悠一さん
Harmonics
Author:ラフ・メイカーさん

□素敵ブログ・サイト様□
ムファッサでほっこり~♪
Author:RIOT様
GONTAのぶらぶら日記
Author:GONTA様

★声優さんブログ様★
阿澄日和
→阿澄佳奈(あすみん)公式ブログ
あきまつり
→豊崎愛生(愛生ちゃん)公式ブログ
マジP!
→間島淳司(マジー)公式ブログ
みなころび八起き
→寿美菜子(美菜ちゃん)公式ブログ
おさとう缶。
→佐藤聡美(しゅがりん)公式ブログ
Strawberry Candy
→竹達彩奈(あやにゃん)公式ブログ
※後日追加予定

◎各社公式サイト様◎
ミュージックレイン
Pl@net sphere
豊崎愛生アーティストサイト
※後日追加予定
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
RSSフィード
リンク