『けいおん!』二次創作SS:共通シナリオ「誕生日パニック!」

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『本日放課後、授業終了後至急音楽室へ来るべし! 律より』


俺が朝起きて携帯を開くとこんなメールが届いていた。果たしてこれは何の前触れであろうか。



?『けいおん!』二次創作SS:共通シナリオ「誕生日パニック!」?



***


年度の終わりが近づいてきた2月28日。一日の授業が終わり、運命の放課後がやって来た。不安と希望が交錯する心境で、約束の音楽室へと向かう。

猛然とそそり立つ二枚の板を目の前に、深く深呼吸をする。この後一体何が待ち受けているのか、それは著者のみぞ知る……。

覚悟を決め勢いよく扉を開くと、激しい破裂音とともに空中を膨大な紙テープの束が飛び交った。色とりどりのそれは鮮やかな曲線を描き、音楽室に無数の虹を創り出した。


『さっくん(咲夜、サク、咲夜さん)、(お)誕生日おめでとう?!(おめでとう!、おめでとー!、おめでとうございます!)』
※読みにくくてすみません。


何が起こったのか全く分からず呆然と立ち尽くしている俺の耳に、声が何層にも重なって入ってきた。室内に架かった虹の隙間から垣間見ると、可愛らしい四人の少女が笑みを浮かべてこちらを見ている。

「そうか、今日は俺の誕生日か……」

頭の片隅にも残っていなかった。中学の時は別段祝われたこともなかったし、一人暮らしではバースデーケーキも食べることはない。

「忘れてたのか? 全く、咲夜らしいな……」

澪が苦笑する。俺を含む他の四人も笑いあう。音楽室に一瞬、温かい空間が出来上がった。


「というわけで今日はサクに素晴らしいプレゼントを用意しました!」

いきなり空間を断つように律が大声で告げた。その言葉を合図に、律たち四人が俺の周りを取り囲む。

「お、何だ? 楽しみだな」

別に物が何かとか値段とかは気にしないが、やはり紬だけに高級なものをくれたり、澪だけに(少々時期外れだが)手編みのマフラーかなんかをくれるのかとちょっぴり期待してしまう。

『プレゼントは愛がこもっていれば物は何でもいい』とはよく言ったもので、付き合いの長い軽音部の連中のことだから、まあ少しは好意も持ってくれているだろうと勝手に考えていた。

そしてそれは大当たり。確かに……そう、確かに「愛」はこもっていた。十分すぎるくらいに。

予想の斜め前どころか180度後ろにある贈り物を、彼女たちは俺にシてくれたのだ。

「さっくんへの私たちのプレゼントは……『私たち』だよ♪」

「ご奉仕しちゃいます♪」

「……は?」

その言葉を合図に、俺はこの世の桃源郷へと誘われることになったのであった。


***


まず、前から唯が勢いよく胸に飛び込んできた。唯はよく抱き付いてくるので若干耐性が付いているとはいえ、この肌の柔らかい感触は反則だ。

「えへへ?、さっくんの体ってあったかくてやさしくて、すごく安心するんだ?♪」

嬉しそうに頬をすりすりと擦り付けてくる。既に思考回路はショート寸前なのだが、これが先鋒だという事実に気が遠くなる思いを抱いた。


次に右から澪が気恥ずかしそうにおずおずと腕を組んでくる。他の三人と比べてプロポーションが抜群な澪。それ故に、喜ばしくも非常に困った弊害が起こってしまう。嘘が付けない正直者の俺の口は、ついいらないことまで喋ってしまった。

「み、澪……そ、その、当たってるんだが……」

「えっ? ……あっ、ふぁっ!?」

しばしぽかんとしていた澪だが、俺が発した言葉の意味に気が付くと、萌えキャラの王道のような可愛らしい悲鳴をあげた。

澪は顔を林檎のように真っ赤に染め、俺の腕を抱いたまま俯いてもじもじしている。そして次の瞬間、俺は自分の耳を疑った。

「さ、咲夜にだったら、私、その、な、何されても、ぃぃ……」

口に出している途中で恥ずかしくなったのだろうか、最後の方は蚊が鳴くくらい小さな声になっていた。

「なっ!?」

驚いた。まさか恥ずかしがり屋の澪がそんな大胆な発言をするとは想像できなかったからだ。

「い、いや、別にそこまで決心しなくても……」

情けなくもあたふたしてしまう俺。こ、ここは俺がリードして……って、俺は何を考えているんだ!


「おーい、そこのお二人さーん。まだ私たちもいるんだ……ぞっと!」

俺と澪のやりとりを傍観していた律は左からしてやったりといった笑顔を浮かべてがしっと腕を掴んでくる。端正に揃った白い歯のきらきらとした輝きがなんとも憎たらしい。


「ハーレムですね、咲夜さん♪」

最後に後から紬が面白がるように体を押しつけて抱きついてくる。くそっ、このお嬢、完全に楽しんでやがる……。


非日常的過ぎる展開に、いつも飄々と接しているさすがの俺も、今回ばかりはたじたじになってしまう。

四人から発せられる女の子特有の匂いが鼻孔を擽る。微妙に異なる香りが一つに混ざり合い、ケーキより甘い芳香を俺の周囲に漂わせている。

あまりの心地よさに気がどんどん遠くなっていく。思考はほぼ停止していた。ああ、俺このまま死んでも悔いはないかもな……。


「……いやいやいや、死んじゃ駄目だろ!」

骨抜きにされかかっていた俺だが、最後の力を振り絞って現世に踏み止まった。そして冷静になって考え、この状況の異様さを改めて認識する。

「からかうのもいい加減にしろ! こんなエロゲの主人公的待遇はいらん!」

俺は大声で少女たちを怒鳴りつけた。しかし、唯、律、紬の三人は全く動じていない。唯は相変わらず体をゆだねてくるし、律と紬はニヤニヤしているだけだ。

唯一、澪だけが驚いたのか、右手にしがみ付いていた体がビクンと大きく跳ねた。そして破壊力抜群の上目遣いで顔色をうかがってくる。

「さ、さくやはわたしたちのこと、きらいなのか?」

「うっ……!」

瞳に大粒の涙を溜め、今にもダムが崩壊しそうになっている澪。まずい、いつぞやと同じような展開。しかしここで屈したらまたやつらの思うつぼになってしまう。ここは心を鬼にして問わねばならない。

「大体俺のどこがそんなに気に入ったんだ!? 俺みたいな凡人のどこに好きになる要素がある!?」

からかっているだけならきっとどもって答えられないはずだ。そう踏んで、この質問を選んだつもりだった。しかし……。

「うーんとね、あったかいところ!」
「つ、強くて優しいところ……///」
「そうだなー、飾らないところ?」
「少し子どもっぽいところです♪」

……即答ですか。しかも嘘を言っているようには思えないほどあっさりと。

脳をフル回転させて思いついた奇策は役に立たない悪あがきに終わった。つまり俺への愛情は紛れもなく本物だと。男としてこれ以上嬉しいことはない。しかし何だろう、この四つのバッドエンドか一つのハーレムエンドしか見えない、某富○見ファンタジア文庫作品の主人公的立ち位置は。ベクトルの向き以外は彼と全くもって同じではないか?

く○むが澪で知○さんが紬で……と、現実逃避をしている場合ではない。俺は今、一世一代の大選択を課せられているのだ。

「さて、サクは誰を選ぶのかな??」
「さっくん、ぎゅーってして?♪」
「わ、私は咲夜のモノだぞ!」
「ここで私を選ぶのも面白いかもしれませんよ♪」

選択肢は四つ。ハーレムエンドは失礼だと考えた俺は、どの個別ルートへ入るか、今後の運命を左右する重要な選択を迫られる。

目をつぶって、ここ一年間で起こった様々なことを思い出す。テスト勉強を手伝って、合宿に行って、クリスマスパーティーをして……。

楽しいことも辛いこともたくさんあった。そのどれもが、何物にも代えられない、大切な想い出。

俺の周りにはいつも四人の少女がいた。しかしその中で、俺が本当に愛していると思えた存在はたった一人だった。俺はその人とこれからもずっと過ごしていきたいと、心から願う。

そして、俺は告げた――――――。







そこで目が覚めた。


***


「夢か……」

まさかの夢オチ。この手のネタで絶対に侵してはならない最大の禁忌。その罪は人体錬成と同等の重みを持つとも言われている。

「どんだけ溜まってんだよ、俺……」

よりにもよって同じ部活の女子の、それもこんな形の夢なんて、今どき小学生でも見ないぞ?

「ハァ……」

罪悪感とモヤモヤした気持ちを抱えて、布団から体を起こす。今日は顔を合わせ難いと深く溜息を吐いた。

「……ん? 何か音がするな……」

発信源を捜索してみると、床においてあった携帯が震えている。画面を開いて確認すると、ユーガットメール。受信したメールの本文は二行ほどで、そこにはこう書かれていた。



『本日放課後、授業終了後至急音楽室へ来るべし! 律より』



「夢、だよな?」


(終)





【あとがき】


はい、ということで、今回で「『けいおん!』二次創作SS(今後は「無印」とします)」は無事、終了となります。

といっても何の感動もなく「『けいおん!』二次創作SS next grade」が始まってしまったのですが。

本当はもっと余韻を残したかったんですがね。お待たせしたせめてもの償いということで、同時更新させていただきました。

まあ、詳しい話は他の記事で話すとして、「『けいおん!』二次創作SS 第一シーズン」いかがだったでしょうか?

本もろくに読まないため、語彙も描写力も拙い僕ですから、お見苦しい点は数え切れないほど存在したと思います。それでも少しでも楽しんでいただけたのならば幸いです。

僕は書いていて楽しかったです。今まではSSを書いても中途半端に終わってしまっていたので、このようにシリーズを完結するのは初めてだと思います。

妄想力とタイピング力は大いに、文構成力もほんの少しは成長したのではないかと感じています。何事も経験です。

「next grade」の方も頑張って書きたいと思いますので、どうか長い目で温かく見守ってやってください。では。
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ジャンル : アニメ・コミック

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非常に妄想力を掻き立てられる良いSSでした。
咲夜のキャラクター好きだなあ。

これで、今まで発表された綺羅さんのけいおん!SSは全部読みました。どれもキャラが立っていて面白かったです。
個人的に一番好きな終わり方は、唯編の「しっとりとしたチャイム」というものです。あれは、良いものだ……。

オリキャラを褒めていただけると自信が付きます。ありがとうございます。

全部読んでいただけるとは……感激です。しかもそんな細かいところまで……。
あれは結構自分でも気に入っています。上手いこと言おうとするとどうしても臭くなってしまうのですが(笑)。
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