『けいおん!』二次創作SS AP:追加シナリオ「love mio life」

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「んー、やっぱ外界の空気は違うねぇ」

春休みといえば血も涙もないアルバイターにとって貴重な掻き入れ時の一つである。俺──藤川咲夜が今受け持っているのはとある会社のPCを使った事務処理の仕事。そのため部屋の中で引きこもりがちになってしまうのは避けられない。

今日は特に作業が立て込んでいたため昼休みを返上して作業を続け、おやつの時間を回った辺りにようやく一段落付いた。そこで少し遅めの昼休みと称して外へ繰り出してきた次第である。

「小鳥は今にも幕を上げようとしている桜色のステージに乗って新曲をお披露目し、暖色の青で彩られたパレットの上を漂う雲はまるで小川のせせらぎを予感させる」

柄にもなくロマンチックなメタファーを誰にともなく呟く俺。通行人が見たら間違いなく春の陽気に当てられた危ない人だと思うだろう。だがそれがいい。今の俺は一仕事を終えた開放感で若干ハイになっていた。

「リズムにHi――おっと、これはまずいな……」

危うく許○剛先生に怒られる台詞を発しそうになり慌てて口を紡ぐ。こんな平々凡々なミスをするなんて、俺もまだまだだね。

ひとりごとを呟いていた口をすぼめたついでに、今度は口笛を吹きながら歩くことにした。数あるレパートリーのなかから選び出した一曲は、今日のうららかな陽気にぴたりと合う『私の恋はホッチキス』。

「????♪」

自分の彼女が作詞し、同じ部活動の仲間が作曲した曲を口ずさむ(正確には口笛だが)とは何と甘酸っぱく贅沢な行為であろうか。どこからともなく羨望の眼差しが降り注いでくるように感じられる。

そんじょそこらの民間人には味わうことの出来ないカクテルに酔いしれながら上機嫌で散歩を続けていると、記憶の扉の奥の方に刻まれた景色が視界に飛び込んできた。

「お、この公園懐かしいな。昔はよくここで遊んでたっけ」

まだ俺が両親と一緒に暮らしていた幼き時代、よく手を繋いでここへ遊びに連れて来てもらった記憶が、頭の片隅に消えることなく残っている。流石にその時の言動までは覚えていないが、それが楽しい思い出だったことは紛れもない事実だろう。

「感傷的になるのはよくないな……ん?」

心にまとわりついた露を振り払うように公園の中を見渡すと、中央に位置する噴水の斜め奥、ちょうど木が日の光を遮って影となっているベンチのところに、よく見知った姿を発見した。

「あれ、もしかして……修二と唯か?」

近づいて確認してみる。見間違えではなく、確かにそれは俺の親友・神代修二と、修二や俺が所属している軽音楽部の部員の一人である平沢唯だった。

「ったく、見せ付けてくれるねぇ」

修二と唯は互いに寄り添う形で夢の中へと旅立っていた。一体いつからここにいたのかは分からないが、このラブラブな姿を見た者はさぞ微笑ましい気持ちになったか嫉妬の炎を燃やしたかの二択だろう。

「んぅ……。しゅー、くぅん……」

寝言で恋うように修二の名前を呼ぶ唯。実に憎たらしい。主に修二が。どうしようか、この幸せな空間を今にも崩壊させてやりたいという欲望が抑えられそうにない。

悪魔となった俺がこの二人をどうにか引き裂く妙案を考えることに心を砕いていると、背後から人の声が聞こえた。振り返るまでもなく、俺はこの声の主が誰であるか確信した。

「あれ、咲夜?」

少し低めの、それでいて砂糖のような甘さを含んだ声。聞き間違えるはずがない。

「澪、どうしてここに?」

秋山澪。俺たちと同じく桜高軽音部に所属している一人。そして、俺が今一番会いたかった恋人-ひと-。

「いい天気だから、何かいい詞が思い付きそうな気がしてな。それより……」

澪が二人の方へ顔を向ける。

「ああ、俺がここに着いたときにはもう寝てた」

「何だか微笑ましいな。」

澪はくすりと笑みを零した。どうやら彼女は前者だったらしい。こんなに心の綺麗な彼女と邪(よこしま)な俺がどうして付き合っていられるのか果てしなく疑問である。やっぱりあれか、愛は全てを超越するのかもな。

俺はその無限大の「愛」を供給するため、澪の身体を後ろから、優しく、包み込むように抱きしめた。華奢ですらりとした、しかし適度に肉が付いてやわらかな感触は、いつ味わってもこれ以上ない喜びを与えてくれる。

「さ、さくやッ!?!?」

「ん、何?」

案の定、澪は驚きで裏返った声を上げた。付き合い始めてもう一年半にもなるのに、反応の初々しさは当初から数ミリも変化していない。それがまた俺のドSスピリットを捕らえて離さないのだが。

「な、何って、い、いきなり抱きつくな! びっくりするだろ!?」

「あんまり大声出すと二人とも起きちゃうよ」

「あっ……」

あわてて口に手を当てる澪。その仕草がまた可愛らしくていじめたくなってくる。

「どうしたんだよ、急に……」

軽く頬を膨らませ、小声で話しかけてくる。身長差から自然に発動する「上目遣い」というスキルに、俺の理性は崩壊寸前だった。

「いや、こいつら見てたらムカついてきた」

「はあ?」

「だから、俺もイチャつこうと思って」

「へっ? あ、ちょっとサク……んッ……」

有無を言わす暇もなく、澪の唇に口付ける。その柔らかい感触は、まるで甘酸っぱいカクテルを飲んでいるかのような心地にさせてくれた。昼間から二杯もグラスを飲み干すなんて、俺もうわばみだな。

「んむっ……ちゅぷっ……ぷはっ! はぁっ、はぁっ……」

なかなかに長い時間をかけて味わっていたので、唇を離してやると澪は息も絶え絶えに、目がとろんと垂れ下がり恍惚の表情を浮かべていた。

「気持ちよかった?」

「…………べ、別に…………」

どう見ても気持ちよさそうな顔で否定の文句を述べる澪。しかしこれも一年半前から変わらないお決まりの展開。そして、俺が待ってましたと言わんばかりに切り返す台詞も決まりきったものだった。

「素直じゃない子にはお仕置きが必要だな」

「あっ……んぅンっ……」

再び深く口付けを交わす俺と澪は、いつの間にか目を覚まし顔を真っ赤にしてその様子を見ていた修二に気付かず、しばし二人だけの世界に浸り愛し合うのだった。


(本当に終わり!)





【あとがき】


まあこういうことだったんです。ヒントを残しておいたので、お気づきになった方もいらっしゃるかな?

最初はおまけとしてこの話を書いていたんですが、どう見てもおまけの分量じゃねえだろってことで、こんな形にさせていただきました。昨日の単作では短かったですが、これである程度の長さになったでしょう。

では、まず本編の説明から。皆さまご存じの通り、僕が大好きな「唯の中の人」に関するお話です。けいおんの夢小説という場で声優ネタを出すのはどうかと迷いましたが、愛生ちゃん(唯の声優)のイメージがあまりに唯と近しいものであるため、思い切ってこの話を書いてみました。歌手名が最初“Aki”で設定も新人歌手だったのを途中で変え、あえて本人のまま登場させることにしたのもそのためです。

次におまけについて。設定としては、NX澪『fuwa fuwa time』の続きくらいに考えてくださればいいかなと思います。もちろん短編なので内容は独立しておりますが。澪シナリオだけを追えば、一応初代から一連の流れに沿うようにはなっているはずです。

総評として、今回は「甘さ」よりも「地の文」と「対比」に力を入れてみました。台詞が少なかったので読みにくかったでしょうが、より小説らしくなっていると感じていただければ幸いです。

あ、あと今後のために言っておきますと、文中の漢字の後に添えた(かな)は正式な読みのルビ、-かな-は当て字のルビです。後者はNX共通で一度使ってるんですがね。まあ確認の意味も込めてお伝えしておきます。

次回は律の話を書こうと思っています。仮題でもお分かりの通り原作沿いの話です。原作沿いはマンガやアニメを見直し、さらに台詞間を地の文で埋めるというなかなか面倒くさい作業を強いられるので、いつにも増して時間がかかると思いますが気長にお待ちください。では!
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面白かったですよー。
咲夜は少し自重しろww昼間っから公園で何やってるww

僕が書いた小説を読んでいただけたようで、とてもうれしいです。おほめにあずかり、光栄です。
でも、僕よりも綺羅さんの方が上手ですよ。
僕にはこんな地の文は書けませんし。

あ、そういえば最近「さよならピアノソナタ」を読み始めました。しかし、曲が殆ど分からないという始末。
知っていれば、もっと楽しいのかなあ。

それでは、このへんで。二次試験頑張ってください。

ありがとうございます!そういっていただけるとまたやる気になれます。
修と対比するために、咲夜がどんどん黒くなっていきます(笑)。いや、あれが本来の姿なのかも……。

今回のは自分でも結構上手く書けたかなと思っています。ただ、言葉を探すのが大変で……。お互い頑張りましょう!

僕も曲はほとんど分かりませんが、一応軽音部だったのであの雰囲気が好きなんですよね。この影響で洋楽とクラシックを聴こうと思いましたがあえなく断念しました(笑)。

国立二次まであと一ヶ月……。精一杯やるつもりですので応援よろしくお願いします!
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