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Infinite Stratos SS Charlotte route『男同士?の撮影会<ボーイ×レイディ>』

※原作5巻までのネタバレを含みます。お読みの際はご注意ください。




















「二人とも、その格好すごく似合うわ!」
黒いスーツに身を包んだ20代後半と思わしき女性が、目を煌々と輝かせて僕と一夏の姿を凝視している。
「はあ、そうですか……」
「あ、ありがとうございます……」
その異様なほどの熱意に、一夏は気のない生返事を返す。僕も勢いに気圧された感じで、社交辞令のようなお礼を口にするしかできなかった。
「やっぱり私の目に狂いはなかったわね……。私グッジョブ!」
こそこそと親指を立ててほくそ笑んでいる様子はちょっとというかかなり怖い。思わず隣に立っている一夏の手をぎゅっと握りしめる。それに気がついた一夏が手を握り返してくれたことが嬉しかった。
「さて、じゃあ二人には早速“撮影”に入ってもらうわね。愛華、後はよろしく」
そう言い残し、女性はハイヒールをコツコツと鳴らしながら、鉄製の重い扉の向こうへと消えていった。その姿をしばし呆然と見つめていた僕と一夏は、ふと響いた明るく快活な声で意識を取り戻した。
「よーし、じゃあ始めようか。まずこれ持ってポーズお願い」
まだ若い女のカメラマンさん――藤宮愛華(ふじみや・あいか)さんというらしい――が僕に木で出来た薄いボードを手渡してくる。ボードは花飾りで可愛らしく装飾され、その真ん中には女の子特有の丸文字でこう描かれていた。

“お客様、@クルーズへようこそ”


Infinite Stratos SS Charlotte route『男同士?の撮影会<ボーイ×レイディ>』


事のはじまりは、学園祭で僕のクラスがコスプレ喫茶をやると決まったことだった。まさかラウラが「メイド喫茶はどうだ」なんてすまし顔で言い出すとは思わなかったけれど、僕には何となくその理由が思い浮かんでいた。
僕とラウラは夏休み中に一度駅前へ買い物に行ったことがある。ラウラの私服をコーディネートしたり、ネコミミの可愛らしいお揃いのパジャマを買ったりして楽しい時間を過ごしたんだけれど、その時にとある女性と知り合ったのだ。
女性はメイド喫茶「@クルーズ」の店長で、何やら従業員に駆け落ちで辞められたという不運に見舞われていた。そこで目を付けられた僕たちがメイドとして働くことになったんだけど……まあそこで一悶着あったのは別の話。
とにかく、そのことがあって女性と顔見知りになった僕とラウラは、学園祭でやるコスプレ喫茶の衣装をその店長さんに貸してもらえるよう頼むこととなった。
うん、確かに衣装は貸してもらえることになった。なったんだけど……その代わりに“ある条件”を課されてしまった。そして、その条件とは……。

「シャルが男装して俺と写真撮影ぃ?」
食堂でヒレカツ定食を食べていた一夏が大きく素頓狂な声を上げた。予想してたけど、もう少しボリュームを押さえてくれたら嬉しかった。
というか、一夏って朝からよくそんな重いもの食べられるよね……。本人曰く「朝に一番食べる方が体の稼働効率がいい」だとか。否定はしないけど……ちょっと僕には真似できないかも。
「ちょっ……一夏、声大きいって」
案の定、一夏の声に周囲の女子たちが振り返り、僕たちを視線に捉えた。幸いにして内容まで聞き取れた者はいなかったらしく、僕を「また織斑くんと一緒にご飯食べてるわよ……ずるい」という視線で撃ち抜いただけで、再び自らの食事へと戻っていった。
「わりぃわりぃ。で、何だって? いまいち意味が把握できなかったんだが」
一夏も朝から大勢の女子に囲まれるのは勘弁、といった顔で声を潜め、ひそひそ話で話しかけてくる。まあ、意味がわからないのも当然だよね。だって僕もよくわかってないもん。
「その……この前の学園祭でクラスのみんながメイド服着てたでしょ? それを貸してくれたお店の店長さんが言ってたんだ」

『あの“噂の男性IS操縦者”とデュノア君の二人に、お店のPR写真を撮らせてほしいの。ほら、今の時代女性優位じゃない? だから男性スタッフに質のいいのを揃えないといけないんだけど、なかなか見つからなくてねー』

そこで“噂の男性IS操縦者”こと一夏に白羽の矢が立ったらしい。何やら学園外でもかなり「イケメン」だと評判なようだ。……面白くはないけど、今は考えないようにする。それよりも問題は――
「俺とシャルが写真を撮ることはまだ納得するとしても……何で男装?」
「そう、そこなんだよ!!」
一夏の言葉についバァン! と、力任せにテーブルを叩いてしまった。ガラス製の容器がトレーの上でガタガタと音を立てたあと、周囲には静寂が訪れる。テーブルを叩いた反動で立ち上がっている僕に、今度は食堂中の視線が集中した。
「あは、あははは……」
その獲物を狙うような鋭い目に萎縮して静かに着席する。やっちゃった、やっちゃったよ……。絶対変な子だと思われてるよ、うう……。
「え、えっと、とりあえず出るか。もう食い終わってるだろ?」
「あ、う、うん、そうだね!」
居心地の悪さを肌にちくちくと感じた僕と一夏は、周囲の注目から逃げるように食堂を後にした。セシリアやラウラに見られてないといいなぁ……と思いつつ。


「はーい、OK! じゃあ次の撮影の準備するからそれまで休憩ね」
愛華さんが自慢のカメラを下ろすのに合わせて、僕と一夏も胸元あたりに掲げていたボードを下ろした。そして張り詰めていた緊張をふっと解くと、自然と口から息が漏れた。
「はあ……。写真撮影って疲れるんだな……」
「まだ始まったばっかりだよ? まあ、気持ちはわかるけどね」
一夏は疲労困憊といった感じで肩を回している。僕も一夏ほどではないけど、ずっと同じポーズを取り続けていたから体が重かった。
「で、でも、悪いことばっかりじゃないよ? その、一夏と一緒だし……」
それに一夏の執事服姿は、学園祭で一度見ているとはいえ、何度見ても格好いい。上から下までビシッと決まった服装とそれを見事に着こなすルックスには、僕だけでなくその場にいる女性スタッフも心を奪われているようだ。あんまり面白くないけど。
「ん? まあ一人じゃ恥ずかしいよなー。俺もシャルがいてよかったよ」
「……うん、そうだね」
相変わらず的外れな返答をする一夏に、さっきよりも数段大きな息が口から漏れる。一夏の唐変木には慣れてきたけれど、一体いつになったら自分の気持ちが伝わるのだろうか。一夏は誰にでもこうだからまだ安心だけど、そのうち誰かに傾くことがあるんじゃないかと思うとやきもきする。
「? どうして怒ってるんだ?」
「……何でもない」
「???」
一夏は僕の気持ちを知らず、頭の上に?マークをたくさん浮かべている。そんな一夏に、僕は気持ちを切り替えて、撮影スタジオの隅にあるテーブルの上に置かれていた缶ジュースを手渡した。
「はい、一夏」
「お、サンキュー、シャル」
プルタブに手をかけて持ち上げると、缶がプシュッと小気味いい音を立てて開く。中に入っているオレンジジュースが一夏の喉を通って吸収されていく。
「ふう、生き返ったぜ。そういやシャル、その服似合ってるな」
「男装が似合ってるって言われても嬉しくないよ……」
一夏と同じ執事服を、女の僕が着ている。しかも二回目とか、これは年ごろの女の子の純情を弄んでいるとしか思えないんだよね。まあ頼まれたから仕方ないんだけどさ……。
「どうせならメイド服が着たかったなぁ……」
頭の中に学園祭で着たメイド服を思い浮かべる。ふわふわっとした可愛らしいデザインのエプロンドレスとホワイトブリム、まるで本当のメイドさんになったみたいで夢のような時間だった。
「ああ、あのメイド服似合ってたな。可愛かったぞ」
「か、可愛いっ!?」
い、一夏に可愛いって言われた! 一夏のことだから深い意味はないんだろうけど、それでも嬉しい。どうしよう、顔が熱くなってきた……。
赤く染まっているであろう顔を一夏に見られないよう背を向ける。絶対不審に思っただろうけど、その時ちょうど撮影の準備が出来たらしく、一夏に気付かれることなく僕はセットの方へと歩いて行った。


「よーし、次も張り切っていこう!」
スタッフとの打ち合わせを終えた愛華さんが、さらに高いテンションで僕達に話しかけてくる。この人、僕たちと年はそれほど変わらないみたいだけど、既にプロのカメラマンとして活躍中らしい。僕もフランス代表候補生として頑張らないと。
「じゃあ、とりあえずこのマンガみたいな構図でお願いできる?」
「え、マンガ……?」
愛華さんの言葉の意味がいまいち理解できないまま、僕と一夏は目の前に広げられた一冊の本へと目を移す。そこに描かれていたのは――一人の男性がもう一人の男性を押し倒しているシーンだった。
「な、な、なぁっ……!?」
さっき一夏に可愛いと言われたときとは比べものにならないほど顔が熱くなっている。な、何これ!? なんで男の人同士でこ、こんな、その、あれなことを……!?
隣を見ると、一夏も口を大きく開けたまま固まっていた。そ、そりゃあんな衝撃的なモノ見せられたら誰だって驚くよね?
「あれ、お子様にはちょっと刺激が強かったかしら?」
愛華さんが僕と一夏の反応を見てニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている。この人絶対にわざとやってるよ……。見かけによらず性格悪いかもしれない。
「はいはい、固まってないで撮るよー? まず一夏くんがその赤い印のところで仰向けになってね」
「は、はい」
ショックから立ち直った一夏が愛華さんの指示通りに仰向けになる。ポーズは先ほどのマンガにあったように、腕を頭の横で折り曲げて首だけ横を向くというものだった。な、なんかどう考えても一夏に似合わないポーズなんだけど……。
「くすくすっ……」
「お、おいシャル、笑うなよ! これ恥ずかしいんだぞ……」
「ご、ごめんごめん。つい面白くて」
一夏の困った顔はどこか可愛らしくていつ見ても飽きない……って、僕も愛華さんと似たようなこと考えてるなぁ。ふふ、でも本当に可愛い……。
「なーに笑ってるの、シャルロットちゃん? 次はあなたの番よ。ほら、早く一夏くんの上に覆い被さって」
「え? ………………えええええええっ!?!?」
愛華さんの言葉を数秒頭の中で反芻したあと、それがマンガの光景と合致する。そうだ、一夏が「下」ってことは、僕が当然「上」になるわけで……。
「ちょ、ちょっと待ってください! こういうのって普通男の人が上じゃないんですか? あ、いや、マンガだとどっちも男なんですけど……」
自分でも何を言ってるのかよく分からなくなってきたけど、とにかく必死で愛華さんを説得しようとする。だって、写真とはいえ一夏を押し倒すなんてそんな……いや、押し倒されるのも、その、は、恥ずかしいけど……。
そんな僕の乙女心と常識(?)を一蹴するかのように、愛華さんは不敵な笑みを浮かべ言い放った。
「世の中にはね、“下克上”という需要もあるのよ!」
スタジオの空気が一瞬、凍った気がした。


「一夏くん、もっと切なそうな表情して!」
「どんな表情ですか!?」
「い、一夏、早くしてくれないと腕の力が……」
「ほらほらー、早くしないと本当に押し倒されちゃうよ?」
「お、おい、シャル、もう少し堪えてくれ!」
「そ、そんなこと言ったって、もう限界だよ……!」
「あらあら、どうせならこのまま待った方がいい写真が撮れるかもしれないわね」
「冗談じゃないですよ! って、シャル、近い、近いって!」
「ごめん、一夏……」
「ちょっ……うわああああああああああ!?」
カシャっと、スタジオにシャッターを切る音が響いた。


「はあ、今日は酷い目にあったよ……」
「全くだ……」
オレンジ色の鮮やかな夕焼けに照らされた歩道を歩きながら、僕と一夏は今日の出来事を遠い昔起こったことのように思い返していた。
結局、あれからも無理難題を次々と押し付けられ、僕たちの精神はじわじわと磨耗されていった。例えば……って、そ、そんなこと恥ずかしくて言えないよ!
あえて挙げるなら……その、ポッキーゲーム、とか……。も、もちろんキスはしてないからね!? いや、ぼ、僕は別に構わないんだけど……! あ、えっと、うう……。
「藤宮さんってあんなにテンション高い人なのな」
「うん、僕もびっくりした。でも、写真を撮るときの表情は真剣だったよね」
構図を考えているときは(多分僕たちをリラックスさせるつもりなんだろうけど)おちゃらけた態度で接してきて、でもひとたびカメラを握ると、その雰囲気が一瞬にして引き締まる。カメラと向き合う表情はまさにプロのもので、僕たちも見習うべきものがあった。
「でも、ごめんね? 僕とあんなことさせられて、いやだったでしょ?」
一夏の心中を推し量って言葉を紡ぐ。だって、好きでもない女の子――しかも男装した――とあんなに密着するなんて、誰だって嫌だよね。そう思って一夏に謝ったつもりだったのに、一夏は僕が全く予想しなかった答えを返してきた。
「え、いや、別に嫌ではないけど……なんというか、恥ずかしいだろ? 男装しててもシャルはシャルなんだし」
「えっ……?」
一夏の言葉に僕は目を丸くする。それってつまり、男装した僕を「女の子」として意識してくれてた、ってことだよね?
うわあ、すごく嬉しい。疲れ切った心に潤いが戻ってくる感じがした。気持ちが弾む。このままISなしで空に飛び立てそうな心地だった。
「ふふっ、そっか、嫌じゃなかったんだー」
「どうした? なんだか嬉しそうだけど」
「えへへ、内緒♪」
「……? 変なやつだなぁ」
一夏が不思議そうに首を傾げている。その姿を視界の端に入れながら、僕はオレンジ色に染まる空を見上げる。

あの写真撮影のとき、一夏が何を思っていたのかはわからない。でも、僕にとっては「嫌じゃなかった」だけですっごく嬉しいんだ。
本当はもっと一夏に好意を寄せてほしい。でも、一夏はこのとおり鈍感だから、僕が頑張って振り向かせるしかない。
一夏を巡るライバルはたくさんいる。箒、セシリア、鈴、ラウラ……他にもいっぱい。みんな僕よりずっと女の子っぽいから、正直かなり手ごわい。でも、僕はやっぱり負けたくないな。だって、僕は――。



一夏のことが、大好きだから。



fin.





【あとがき】

はい、ついに始まりました「インフィニット・ストラトス SSシリーズ(仮)」。第一弾は僕が一番好きなシャルで書いてみました。
なにぶん(いつものことですが)無推敲クオリティなので、文章力とかは勘弁して下さい。ほら、僕のSSは想像力を鍛えるトレーニングツールなんですよ、はい。
このシリーズは全6作(メインキャラ5人×1作+共通ルート1作)で構成される予定です。各作品の繋がりは全くない予定ですが、原作の話と関連付けるため、ネタバレは続出すると思います。お読みの際はご注意ください。
で、僕がこれを書く際に一番悩んだのが「オリジナル主人公」を立てるかどうかです。けいおんと違って男主人公がいるからわざわざ立てる必要はないんですが……ほら、一夏ってあれじゃないですか。あんまりいい主人公じゃな(ry
でもせっかく主人公がいるんだし、キャラ設定するのも面倒なので、とりあえずこのシリーズは全て一夏を主人公としてやっていきます。どうぞご了承ください。
あ、ちなみに藤宮愛華は僕のオリジナルキャラクターです。今後登場するかどうかは……微妙ですねww
では、とりあえず今回のところはこれで。次は誰を書こうかな……。一応全員分のプロットは立ててあるので、箒以外なら書けます。箒はちょっと理由があって最後に書きたいかなと思っているので。リクエストがあればお申し付けください。ではノシ
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ジャンル : アニメ・コミック

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